泣いていいんだよ。って今なら言えるよ。
数年前、私はすごく優秀で若く、すごく美人な友人を病で失った。
「姉さん、レターセットが欲しいんです。買ってきてもらえませんか?」滅多に人に頼み事をしない彼女から電話があった。
彼女は身の回りの何もかもをきれいに片付け、ホスピスで療養していた。
その言葉を聞いた時親しい人にお別れの手紙を書こうと思っているのだなと察した。
それにふさわしい美しい便箋と封筒を選んで求め彼女を訪れた。
来訪をとても喜んでくれた彼女は、本来ならば食べれるはずがない状態なのに一緒にケーキを食べ、りんごを食べ嬉しそうに笑った。
私は看護師だから、状況が厳しいことはよくよく分かっていたが、この様子なら気力で持ちそう。1ヶ月は大丈夫だろう。
その間に奇跡が起こって方向が変わるかもと希望的観測を捨てきれなかった。
しかし、二人きりになったとき、寂しそうに「母はとはやっぱりダメでした。」と呟いた。
その時私は自分の予測が甘すぎたのを思い知ったが、そこで何ができよう。そこにいて、静かに共に時を過ごすことしかできなかった。
それから3日後彼女は旅立った。
「姉さん、姉さんは幸せになってくださいね。」強い身体的な苦しみの中でもなんども、なんども私の幸せを祈ってくれていた。
葬儀の日私は福岡空港にいた。棺の中の彼女の振袖姿がどんなに美しかったか、彼女の親友が語る。
電話を片手に突然ボロボロと涙を流し始めた私を周囲の人は驚いてみていた。私は人目を憚らず号泣した。泣いた。泣きまくった。
こんなに自分が泣ける人間だと知らなかった。
今考えると、彼女泣いた姿を見たことがない。
優しくて、優秀すぎるほど優秀で、自分に厳しい人だった。
泣きたい時には泣くのがいい。我慢しないで泣くのがいい。そして泣き切った後には、また、微笑みが戻ってくる。
泣いて、いいんだよ。